リアルとバーチャルの融合で新たなエンタメ事業を創造
XR(クロスリアリティ)技術を用いたエンタティメント空間の創造に力を注ぐ、バルス株式会社。独自の配信プラットホーム「SPWN(スポーン)」から配信されるバーチャル3D空間でのライブが高い評価を集め、ユーザー数も増加の一途を辿っています。同社にとって初めて地方拠点として選んだ地が大分県別府市です。コンテンツ企画本部 本部長の髙瀨希望さんに、進出から今日に至るまでのお話を聞いてきました。
XR技術を導入したエンタメコンテンツを制作
御社が取り組まれているコンテンツ事業についてお聞かせください。

当社は有料配信プラットホーム「SPWN」を通じた「SPWN事業」と、VTuver(ブイチューバー)の3Dライブを実現する「XRライブ事業」の二つを軸に事業を展開してきました。コロナ禍となりVTuverのライブ配信が拡大していくなか、業界最大級のモーションキャプチャースタジオを完備しており、新しいエンタメコンテンツの制作にも携わってきました。その一方でVtuberのように動画初のIPを世界に打ち出していく事業が、成長余地を残しつつも成熟し始めたので新しい挑戦をしたいと考え、新たにアニメーション制作事業に参入しました。
日本のアニメは世界から高く評価されていますね。
アニメの制作には莫大なコストと人材不足が話題にのぼりますが、当社の場合、3Dモーションキャプチャー等を用いることで大幅なコスト削減を可能にした制作体制を目指しています。新しく設置した別府の拠点では、モーションキャプチャーの動画を撮影処理や背景との合成、仕上げを行う作業を中心に行なっています。当社としては、本社以外では初めての地方進出になります。
九州・大分で新たな才能の発掘に期待
大分県別府市を選んだ理由を教えてください。
企業誘致に積極的な県を探していたところ、大分県が目に留まりました。問い合わせたところ、担当の方がすぐにオフィスに来てくださり、現地の紹介やサポート体制など丁寧に説明していただきました。これが2023年11月のことだったのですが、実は翌年秋にアニメの新作放送が決まっていたので、「春までに人材を募集して事業を開始したい」と伝えたところ、そこからが早かったですね(笑)。さっそく大分に出向いて、いくつかの候補地を案内してもらい、結果的に決めたのが別府で2024年3月には事業を開始しました。もともとパソコンとネット環境さえあれば、すぐに仕事ができる業種ですから、紹介されたテナントオフィスを一部リフォームして、早々に事業を開始しました。
九州ではIT関連企業が集中する福岡も候補にあがったのでは。
都市機能が充実し、豊かな生活環境を有する福岡はIT関連企業も多いのは確かですが、そのぶん人材確保に関する競合先が多い地でもあります。ゲーム開発などエンタメ系事業を主とした企業も多いですしね。一方、大分県内にはシステム開発の企業はありますが、エンタメ系コンテンツを手がける企業が見当たらないので、当社が有利と考えました。人材的には東京本社での募集する時と、なんら遜色はありません。むしろ当地にエンタメ関連の業種がないぶん、意欲的な方が多いと感じています。
本社スタッフも関心を寄せる恵まれた制作環境
現時点で別府は何名体制ですか

アニメ部門は9名で、別に2名のSPWN事業のメンバーが在籍しています。半数以上は県内出身者ですが横浜、大阪、福岡の方もいて、皆さんXRなどの最新技術、 アニメに関心を持たれて応募して来られ、バルスでスキルを磨き上げたいと考えている方ばかりです。それまでホテル事業や放射線技師など全く違う業界から転職された方もいますが、当社がやっているエンタメ事業に興味があり、やる気を持って新しいキャリアを身につけようという熱意を感じたら、どんなバックグラウンドの方でも受け入れています。
勤務体系などで本社との違いはあるのですか。
別府オフィスは基本的にフル出社体制でフレックス制を採用しています。多くは朝11時に出社、早い人で朝10時くらいで、そこから8時間勤務というスタイルです。また、現時点で当社での勤務経験が浅い方ばかりなので、技術指導のディレクターが入れ替わり立ち替わりで来県しています。常駐のマネジメントメンバーも配属されていないので、私も2ヶ月に一度くらいは別府に来ています。
実際に大分で暮らし始めて、県外の方はどのような感想をお持ちでしょう。
真っ先に応募してこられた横浜出身のメンバーは、温泉や食べ物など別府での暮らしに満足されているようですね。スタジオ設備がある東京本社がビジネスのメインになるのは変わりませんが、会社で借り上げている温泉付きの賃貸物件もあり、ワーケーション感覚で出張を希望する社員もいるくらいです(笑)。
別府から新しいエンタメコンテンツを発信
地元から新卒学生の受け入れも考えていますか。
今年3月に開設したばかりなので、まだ新卒学生はいないのですがインターンは受け入れています。大分県内にはITスキルを学べる大学、高専、専門学校があるので、地元でエンタメに興味のある学生さんの受け皿になれればとも考えており、就職イベントや交流会にも積極的に参加しています。インターン学生の中には映像を学んできた方もいて、スタジオのある東京本社にも興味を持たれていました。バルスの制作現場を紹介する機会を授業の一環として与えてくださる専門学校もあり、参加学生は真剣に耳を傾けていましたね。
大分で何かやってみたいことは。
当社だからこそできることを考えると、いずれ別府を舞台にしたアニメを制作したいと話し合っています。行政や地元企業とのコラボには積極的なアプローチをしていまして、新宿が舞台のアニメ作品では東急歌舞伎町タワーの空間を使わせてもらいました。「メディアミックスを経て聖地巡礼にまでつながれば、別府に拠点を作った意味が拡がるよね」とディレクターのメンバーたちと話しています。

大分に進出を検討されている企業担当者へ、何かアドバイスがあれば。
当社としては初めての地方拠点となったのですが、担当窓口の方が支援策からオフィス探しまで親身になって対応してくださいました。なによりも土地勘がないので、地図と写真だけではわからない点も多く、的確なアドバイスをいただき助かりました。事業開始後も相談に応じてくださっており、大変感謝しています。
企業データ
社名 | バルス株式会社 Balus CO., LTD. |
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代表者 | 林 範和 代表取締役 |
資本金 | 5,300万円 |
事業内容 | クリエイターとファンをつなぐ次世代型オールインワンプラットフォーム「SPWN」の運営、XRコンテンツおよびアニメの企画・制作・運営 、アニメ制作事業 |
設立 | 2017年10月30日 |
社員数 | 73名(2024年11月現在) |
ホームページ | 公式サイト(外部リンク) |